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スコーミッシュでの暮らし #13 Tantalusアルパインクライミング③
2025-09-09 (ANJUブログ)

前々回からの続きになりますので、①はこちら、②はこちらから。
DAY3 Dione / South face / Southwest Buttress (5.10a)
さて、あっという間にDAY3。クライミングができる最後の日です。DAY1、DAY2と連日10時間越え行動をしているのにまだ山のピークに立てていない!そして5.10台にも到達できていない!ということで、最終日は、Dioneのサミットを目指して、Southwest Buttress 5.10aを登ることに。
前日に水・朝食・行動食・ギア全て用意し6時起床。
気合いバッチリなのに、そこそこ優雅な朝を過ごして7時半行動開始。笑

初日と同じエリアなので、再び氷河の上を歩いていきます。ロープアップなしで比較的スムーズにいきましたがそれでも取り付き到着は10時10分。約2時間半のアプローチになります。

ちなみに、ノリノリでアロハで登りましたが首の日焼けが体力を奪ってきます。
フード付きの長袖か、サンマスク等推奨です笑
今回も岩と雪の間にギャップがあります。

写真だと分かりづらいですが、下が全く見えない奈落の底になっています。
まずは、ロープを繋いだまま、アイゼンも履いたまま、ステップを作ります。
15分ほどでステップ作りは完了。
そこから再びアプローチに使った装備を全てしまい、クライミング準備。
クライミング開始は11時20分。のんびりしていたつもりはありませんが、雪上の急斜面で作業をするのは、慣れていないこともあり時間がかかります。到着してから登攀開始まで1時間以上。。。!

1ピッチ目(5th?) 50m ※オフルート てんぺいさんリード

雪と岩とのギャップもあり、取り付きからトポとは違ったのか、いきなりオフルート。
トポにあるボルトが見当たりませんでした。
体感5.10aのトラッド。朝からなかなか痺れましたが、結構いい感じのラインでした。
5mほど離れた違うライン上に終了アンカーが確認できましたが、今回登ったラインにはなかったのでスリングビレイ。
2ピッチ目(5.8?)[Dehydrated on Dalwhinnie 4ピッチ目] ※オフルート あんじゅリード
1ピッチ目の終了点から真っ直ぐガリーを上がり、途中右のレッジに出ました。
ガリーは岩がかなり脆く、プロテクションはほぼ取れません。
登っている途中に下から1パーティやってきて、正しいラインはガリーを上がるのではなく左に回り込むんだと教えてもらいましたが、なんとか正しい終了点には辿り着くことができました。
帰宅後確認したところ、このピッチを正しく左に回り込んでいれば、Dehydrated on Dalwhinnieという隣のラインの4ピッチ目だということが分かりました。
3ピッチ目(5.10b)[Dehydrated on Dalwhinnie 5ピッチ目] てんぺいさんリード

終了点から右側のボルトルートへ。
実はこれもDehydrated on Dalwhinnieという隣のラインの5ピッチ目でした。
ボルトを辿らずに、終了点から左側の綺麗なクラックを登ると、正規の2ピッチ目(5.6)に該当します。
3ピッチ目終了時には14時15分。後続パーティーは一度このラインを登ったことがあるそうで登るスピードも速いので抜かしてもらいがてら、ランチブレイク。
4ピッチ目(スクランブリング)[正規] てんぺいさんリード

ランチブレイクの関係で右からの画角になっていますが、終了点から右上に向かってスクランブリングしていきます。
トポではスクランブリングをピッチとして数えていませんが、2ピッチ目と3ピッチ目の間です。
ちなみに、終了点から右へ右へとトラバースしてから直上するとDehydrated on Dalwhinnieに辿り着いてしまうので注意です。終了点から上を見上げると、右奥に綺麗なフェイスがありついついそっちにいきたくなってしまいますが、一つ手間を登りましょう。
5ピッチ目(5.9)[正規3ピッチ目] あんじゅリード

1番右のクラックを登り、グルーブに入っていきます。最後は左抜けでトップアウトするとロープの流れが良かったです。
ようやくクライミングらしいクライミング!天気も景色も良くて最高!
4ピッチ目まで、隣のラインが近く分かりづらかったですが、ここからは一気にラインが分かりやすくなりました!
6ピッチ目(5.10a)[正規4ピッチ目] あんじゅリード

さっきよりももっと綺麗なクラック。昨日、今日と美味しいピッチがなかなか回ってこなかったので、ここは懇願して2ピッチ連続登らせてもらうことに。笑
正面の薄かぶりのダブルクラックを登ります。クラックに入り込むまでが少し遠くて、悪いです。
その後は易しくなりますが、岩が少し脆くなり、プロテクションもピリッと悪く、懇願した甲斐のある気持ちいピッチでした。
7ピッチ目(5.10a)[正規5ピッチ目] てんぺいさんリード

コーナとクラックを使って写真の左に写るレッジへ。その後はフェイスのクラックを辿って右へ登ります。
上部はクリスタルが脆く、慎重に登らなくてはいけません。

高度感満点の非常に楽しいピッチでした。ただビレイはハンギングビレイになります。
8ピッチ目(スクランブリング)[正規6ピッチ目] あんじゅリード

スクランブリングで、写真奥の岩頭を目指し10mほど移動。
帰宅して登ったラインを確認した際に、4ピッチ目の長いスクランブリングはトポに書かないのに、この8ピッチ目は書くのか…と、正直困惑。笑
全体的にアルパインはトポが大雑把で、自分の力でルートファインディングしなければいけないことを実感しました。
9ピッチ目(5.10a)[正規7ピッチ目] てんぺいさんリード

ランナウトスタートでフェイスを登ります。途中フレアしたクラックにカムを打っていました。
ボルトは1本だけで、全体的にリーチーに感じました。岩頭の頂上まで一気に駆け上がります。

ハイライトピッチですね。露出感・高度感、全て満点。ラインが最高にかっこいいです。
ここもハンギングビレイになります。
10ピッチ目(スクランブリング)[正規] あんじゅリード
スクランブリングでリッジまで向かいます。ここはボルトが2個ありました。
ここよりも、さっきのフェイスに打って欲しいなという本心。笑
11ピッチ目(スクランブリング)[正規8ピッチ目] てんぺいさんリード

いよいよラスト!稜線歩きで一気に頂上まで駆け上がります!
ロープは70mギリギリでした。
登頂〜〜〜!

19時30分!Dione (2590m)のサミットに立てました!
なんだか、いつの間にかフリークライミング主体になっていた自分にとって、久々の大きな山の頂はひときわ美しかったです。「自分が本当にやりたかったことに、少しずつでも近づいている」そう思うと、サミットで思わず涙が溢れてしまいました。

Dioneから見たTantalus。
さて、シューズをアプローチシューズに履き替えて下山開始です。
サミットの10m手前からEast Faceを懸垂下降します。

全てラペルステーションありますが、2回目の懸垂下降はステーションから真下ではなく右下へと降りてください。かなり、分かりにくい位置に次のステーションがあります。
20時40分、5回の懸垂下降で雪上に。今回も岩と雪上の間にギャップがあるので小ジャンプが必要でした。
初日に登ったPetite Dioneに向かって雪上を歩きます。

アイゼンは不要。日もすっかり傾いてきてしまいました。
10分ほどでPetite Dioneに到着です。
自分たちが登った山が影になって空に現れました。

初日の下降路Le Petite Couloirの懸垂ポイントに向かって今度はスクランブリングで降ります(アプローチシューズのまま)。
ケルンに沿って反対面に出て歩きます。かなりガレているので真っ暗になってからは降りたくないですね。
30分ほどでLe Petite Couloirの懸垂ポイントに到着!
ここからは初日と同じなので、一気に安心感が。

22時、2回の懸垂下降で、ようやく雪上に〜〜〜!
すっかり真っ暗になってしまいました。
アイゼンを履いて誰かのトレースを辿って再び氷河の上を歩いていきます。
真っ暗でも、初日に一度歩いているのでそれだけで安心感がありますし、ペースも上がります。
23時40分テント到着!
なが〜〜〜〜〜い16時間20分行動の1日でした。
こんなに長い行動時間何年振り?と思いましたが、なんとかなるものですね。
テント戻ってからはうなぎとたくあんで幸せいっぱいお腹いっぱいに。

このご馳走をカナダのどこで仕入れたかって・・・?
スコーミッシュ市内にはSAKURA MARTという日本食スーパーマーケットがあります!
そこに冷凍うなぎやたくあん、和菓子、お菓子、たこ焼き器…なんでもあります。朝のスープもSAKURA MARTさんから日本のインスタントスープを購入させていただきました。
山でも使える日本の数々の製品、カナダに来てありがたみをひしひしと感じます。
ぜひ日本食が恋しくなったら遊びに行ってみてください!店主のお姉さんもとっても素敵な方です!
DAY4 最終日。

初日や計画段階では、「ヘリピックアップ時刻の15時まで時間があるから軽く登りにいけたらいいね」なんて話していましたが、誰もテントサイトから出ようとしない私たちでした。笑
の〜〜〜んびり大絶景を見ながらみんなでお喋りしたり、テント撤収したり、肌を焼いたり、贅沢なダラダラ時間を過ごしました。
ただ、このキャンプサイトでじっとしているのはあまりにも暑かったです。日を避けるものが何もない…!
そして、この日は風がなかったので蚊もとても多かったです。日除け、蚊除けは用意したいですね。
15時に予定通りヘリに乗って地上へ。その後みんなでダウンタウンで夕飯食べて5時半には帰宅。
さっきまで、天国みたいな世界にいたのに、一瞬で家。近い。近すぎる。これがスコーミッシュ、そしてTantalusの魅力なのです、、、。
カナダの夏、アルパインクライミングというとバガブーが有名ですが、
タンタラスも知られていないだけで最高に楽しかったです。
なんせ、天気のいいタイミングを見計らって入山できますし、天気待ち中はスコーミッシュで登れるんですから…!

さてさて、久々に長い記事を書きました。
そして久々の大きい壁。
相変わらず反省点はいっぱいですが、
でも自分の成長を感じることができました。
怖いが優ってしまったヨセミテの時に比べたら、今回はずっとずっと楽しめた。
大きな壁の中で、クライミングが楽しいと思えた。
たった、それだけ。でも、きっと、それが全て。
これからも、世界中で楽しいクライミングができますように!

※今回参考にしたトポは、Alpine Select Climbs & Scrambles of Southwest British Columbia です。
※記載の情報はすべて2025年7月時点のものです。
text : 寺井杏雛
Photo credit : Tempei Takeuchi / 寺井杏雛