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スコーミッシュでの暮らし #11 Tantalusアルパインクライミング①
2025-08-18 (ANJUブログ)

最高に楽しいアルパインクライミングに7月末、4日間ほど行ってきました!
今回の目的地は、Tantalus(タンタラス)というアルパインエリア。
スコーミッシュの北西に位置する街から比較的近い山ですが、ベースキャンプで標高が1,800m、タンタラスの山自体は2,600m。
そして何より登る対象は、氷河の上にあるのです。
どんなロングアプローチを歩いたかって・・・?
人生初ヘリコプターに乗って行きました!

朝6時に起きて、7時に車でヘリポートへ。
ヘリの説明を受けて、15分ヘリに乗ったら・・・
岩と雪の世界です。

今回ドロップしてもらったのは、Jim Haberl Hutという山小屋で、宿泊は小屋の横にテントを張りました。
ヘリのいいところは荷上げしなくていいので、大量の荷物を持ち込めるところ。
4人でこの量の荷物を持っていきました。

ヘリコプターやキャンプサイト等については下に詳細まとめておきますので、よかったらチェックしてください。
さて、テントを張ったら行動開始です!
DAY1
Petite Dione / South face / Banantalus (5.8/3p)
テントを張ってどこに登りに行くかみんなで相談してたらあっという間に10時過ぎ。初日だし、時間も遅いしということで、近場で短めのマルチに行くことに。
近場といっても氷河の上を約2kmトラバース。
私はスポルティバのボルダーXミッドのアプローチシューズに12本爪アイゼンでアプローチしました。
初日の行きのアプローチだけは、タグラインでロープアップしましたが、比較的歩きやすいと判断し、その後はロープアップせずに歩きました。
途中、こんな風に剥き出しの氷河が何度も登場しました。

見た目通り氷河は硬く滑りやすいので、避けて雪上を進みます。
クレバスをたくさん目視しましたが、まさに「奈落の底」。万が一落ちた時のために、クレバスレスキューも事前に勉強しました。
近場のつもりで歩き始めたものの、氷河を避けるためにアップダウンしたりなんやらで取り付き到着は13時半!
3時間以上のアプローチの一体どこが近場なのだろうか・・・笑
休憩し、タグラインと冬道具を全てしまい、ロッククライミングの準備。
登り始めは14時半。
1ピッチ目
まず、雪と岩のギャップを超えなくてはなりません。このルートに関しては、アックスを使って地面から一段下に降りたら、大きく1歩踏み出すだけで岩に取り付けました。
ルートによっては、1ピッチ目に取り付き不可でオフルートしてしまうものもあり、メインのクライミングが岩登りであったとしても、雪のコンディションに左右されるのがカナダならではだなと思いました。
さて、ようやく本題。
1ピッチ目はガチャガチャした弱点のコーナーを登って行きます。

ところどころ脆い岩や剥がれそうな岩もありますが、プロテクションは取りやすく、ラインも顕著。終了点が直上ラインから少し外れた左上にあり、見つけにくいです。私たちは終了点に気が付かなかったので、ギアビレイ。
2ピッチ目 5.8

遠くから見ても顕著なコーナー。
そしてこのコーナー右面がバナナのようなシェイプなので、バナナ×タンタラス="Banantalus" というルート名!
コーナークラックはすごく綺麗なハンドクラックで気持ちよく登れました。
こちらはクラックが終わってすぐのわかりやすいところに終了点あり。
終了点からの眺め。

「雪の上で岩を登っている」という初めての状況にワクワクが止まりません。

後ろの雪が最高にかっこいい!
3ピッチ目 スクランブリング

頂上に向かってスクランブリング。
2ピッチ目の終了点から左に向かって登っていきますが、リッジを超えて裏に回ってしまうとオフルートしてしまうので、リッジラインは超えないようしましょう。17時前にはトップに到着しました。
ピークを超えたところの1段下に残置スリングのラペルポイントがあります。

ラペルしガリーの北側に出て回り込むとLe Petite Couloirというラインの懸垂ポイントが見つかります。

70mロープで2回ラペル、ラペルステーション有り。
下降路として、トポには2つ選択肢がありました。
一つは、2ピッチ目まで登って同ルート下降。
もう一つは今回のようにスクランブリングをしてピークを超えてからLe Petite Couloirで下降。
個人的な感想としては、3ピッチ目のスクランブリングはあまり綺麗でないので、同ルート下降の方がスムーズでおすすめです。
さて、クライミングが終わったら今度は再び氷河を歩いて帰ります。

帰りはロープアップせず1時間半でテント場に戻れました。
が、この日は4人で足並み揃えての行動日だったのでお互いを待ったりする時間も多く、テントに戻ったのは21時前。
軽めライトなつもりがしっかり一日行動に。笑
ちなみに日没は21時前。
7月末で約15時間の日照時間なので、ヘッデンなしでたくさん行動できるのはこの国ならではですね。

実は高校生の頃、冬山を歩いたり、大学生になってからは何度か冬季アルパインクライミングに連れて行ってもらったことがありました。もともと、冬のアルパインに強い憧れがあったんです。
でも、冬季アルパインの厳しさにうまくついていけず、やがてフリークライミングに夢中になっていく中で、「もう一度、雪山ハイクを再開するのはちょっと違うな」と感じるように。そしていつしか「雪山はもういいかな」という気持ちになっていました。
そんな背景もあって、カナダに来る直前、私はそれまで使っていた冬山装備をほとんど手放しました。そのお金は、カナダでの生活費やマウンテンバイクにあてることに。
でも、2ヶ月ほど前、バンクーバーにある「フライオーバー・カナダ」というアトラクションに行った時、気持ちが大きく揺さぶられました。映像で映し出されるカナダの雪山の美しさに、思わず涙が出そうになるほど感動したんです。
あの時、「もう一度、雪山に行きたい」と強く思いました。私の中で“雪山=冬季アルパインクライミング”という固定観念になっていたけれど、スキーやスノーボード、氷河の上でのフリークライミング……。
美しい雪山と関わる方法は、実はたくさんある。せっかくカナダにいるのだから、自分なりのやり方で、もう一度この世界に飛び込もう、そう思いました。
だからこそ、今回の氷河歩きは、ただのアプローチ以上の意味がありました。
久しぶりに雪山に戻ってくることができて、本当に嬉しかったです。

DAY2に続く…。
ヘリコプター・キャンプ・その他詳細情報
ヘリコプター
今回私たちが利用したのは、Black Tusk Helicopter というスコーミッシュにある会社。タンタラス山脈までの往復は約$1,500 で最大5人まで乗れます(最安 約$300/1人 )。フライインは7時、フライアウトは15時で、ハット以外にもドロップポイントがいくつかありました。
タンタラスに行くことができるヘリコプター会社は、この会社以外にも複数あります。
荷物は1つ1つの梱包が大きすぎるとヘリに乗せきれなくなってしまうので、60Lほどの大きな荷物は3,4つくらいまでに抑えてあとは30〜40Lパックに分散させた方がいいです。
実は、当初、カナダの氷河の上のクライミングといえば…な、バガブーに行こうとしていました。
が、スコーミッシュからバガブーまでの車移動、ロングアプローチ、歩荷、天気待ち等を考えた際に、天気の良さそうな数日間を狙って近場のタンタラスにヘリで行った方が効率良いのでは?ということで、計画を変更しました。
私たちはヘリの予約をフライトの2日前にしましたが、ちょうど数日間天気が良くなるタイミングだったので他の会社含めたくさんのヘリが飛んでいました。場合によっては予約が埋まってしまうこともあると思うので、天気を見て早めに連絡することをお勧めします。
キャンプ

Jim Haberl Hut の隣にテントを張ることができます。特に誰かが管理しているわけではないので料金は発生しません。が、眺めは最高です。
水場はありませんが、テントサイト周辺の雪を溶かして沸騰させると飲むことができます。人によっては、浄水フィルターや化学薬品で殺菌する人もいますが私は沸騰だけで問題ありませんでした。
Jim Haberl Hut にも宿泊可能です。詳細はこちら。
その他
日差しは暑く、風は冷たいです。

個人的には日本の冬山よりもずっと日差しが強く感じました。日除け対策必須です。日焼け止め、サングラス、長袖、サンマスク等あるといいです。

一方、風は冷たく、夜や曇りの際など、太陽がないと寒いので防寒着も必須です。パタゴニアのビレイパーカ、ダスパーカを今回は行動中もキャンプ中も寒い時には使いました。
※記載の情報はすべて2025年7月時点のものです。
text : 寺井杏雛
Photo credit : Tempei Takeuchi / 寺井杏雛