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Squamishでの暮らし #5 Freeクライミング

2025-06-25 (ANJUブログ)

このブログを読んでる人の多くがやっているクライミングはおそらく、「フリークライミング」だと思います。
※去年私なりにクライミングの種類分けしたので興味のある人は読んでみてください→ロッククライミングの種類
簡単にいうと、フリー=道具に頼らず人力だけで登っていくことです。マットやロープ、ドロー、カムはあくまで安全確保のためであって登る手段ではないということですね。

でも、定義的な話ではなく、もっと精神的な話をしましょう。
精神的に自由なFreeなクライミングってなんだろうという話です。

人の数だけ答えはあると思いますが、私は、
究極、目の前の惹かれるラインをグランドアップで前情報なしに登っていくことなんじゃないかと思います。
あるいは岩と自分の境が曖昧になるくらい没頭してLost myselfの状態になることとか。

ただ、後者の域に達するにはまだまだ鍛錬が必要ですし、前者においても冒険者・開拓者ではない今の自分にとって容易なことではありません。

でもそんな私でも、いつものクライミングよりもちょびっとFreeを感じられるクライミングが最近できたので、シェアさせてください。



まずは、私にとってはじめてのスタイル、サイモ(simul climbing、同時登攀)。

今回は、短めのロープ(25mくらい)で5.7くらいのスラブのマルチルートを数ピッチ繋げて一気に駆け上がっていきました。
通常、ロープの長さに合わせてピッチを切る必要がありますが、同時に登ることでロープの長さは考慮しなくて良くなります。また、通常リードクライマーとフォロワーが別々に登るところを同時に登るので時短になります。
※この技術自体は墜落時に危険を伴い、特別な技術も要しますので、慣れていないルートや、熟練者でない人にはお勧めしません。自己責任でお願いします。今回は、何度もそのルートを登っているスコーミッシュのローカルクライマーてんぺいさんにリードしてもらい、私もフォローで絶対に落ちないという自信のもとで登っています。
これまでピッチを繋げるといっても、せいぜい2ピッチ繋げるくらいまでしたことがなかったので数ピッチ繋いでいくのは今までの自分のロープクライミングとは全く違う感覚でした。岩を「登っている」というよりも「駆け上がっている」感覚で、墜落の恐怖とは全く別の次元に自分がいました。そして何よりピッチやロープの長さに捉われない自由な登り方にドキドキしました。

今回はフォローだったので、まだ、サイモがどんなものか、味見程度に過ぎませんが、自由を感じることができました。

サイモで早朝から素早く登って、昼には気持ちよくトレイルを歩いて帰る。そんな最高な日でした。



続いて、North North Arete というマルチを登ってる時のお話。
スコーミッシュには、ボルダーからマルチピッチまで無数にラインがありますが、四つ星やTop100マークが付いているものは特に休日混み合います。が、星の少ないラインも十分すぎるくらいクオリティが高いので、休日や真夏の混み合うタイミングにはおすすめです。

ということで、ちょうど休日にマルチピッチに行きたかったので、North North Arete(☆☆)に行ってきました!基本0分〜10分程度のアプローチで素晴らしいルート登り放題のスコーミッシュですが、今回は45分ほどNorth Wallの森の中をアプローチします。

久々の45分アプローチに汗だくでしたが、雄大な森の中がとにかく気持ちいい。全く苦に感じない45分でした。

これまで、スコーミッシュではこんなに気持ちよくていいんですか!?というくらい綺麗なマルチピッチ(そして人気ルート)にしか行っていなかったので、久々のちょっとアルパインチックなクライミングにドキドキ。

1ピッチ目

ジャングルジムみたいなところを登っていきます。


カナダに来てから日々薄着になっていく私。※服着てます。

3ピッチ目

ルートファインディングにちょっと苦戦しながら左右のクラックを行ったり来たりしながら登っていきます。

そして、30mほどの歩きパートの後、5ピッチ目を見失いました笑
「ここかもしれない」「でもここじゃないかも」というラインが数本。

迷いに迷って、「ここかもしれない」に行ってみることに。

ビレイしながら何やら面白そうなワイド登攀が見えて早く登りたい!でいっぱいでした。


いざフォローしてみると、そこにはチムニーとそしてシンハンドサイズのクラックが!
ワイド登りしながらプロテクションまで取れてしまうというご褒美ラインでした。

ただ、登り終えても今登っているのがNorth North Arete なのか否か、わからない!
てか、たぶん違う!
たぶん本来行きたかったラインじゃないけど、目の前に綺麗なコーナーが現れたのでとりあえずリードしました。

ちょっと緊張感のあるコーナーの上にはワイドクラックが待っていて、なかなか素敵な6ピッチ目。


思いがけず、迷子になってしまったおかげで最後の2ピッチを、トポの情報なしに登ることができて非常に楽しかったです。後日に友達にNorth North Areteのこと聞いてみたら、「あそこ絶対迷うね!自分もいまだに正解が曖昧だし友達も全員迷っている笑」とのこと。

正直、このルートに関してはトポが分かりづらいです。
ルートの長さも実際のものよりも全体的にかなり長く表記されているなど、ちょっと不正確。
でも、おかげで、次どんなのが来るか分からないけど、楽しそうだから行ってみよう!といういつもよりも素直な自由な気持ちで登ることができました。

ちなみに、最後の2ピッチは、現行で出版されているトポにはないラインだとわかりました!
開拓者のFBを見るに、Hyperspace Bypassのラスト3ピッチに合流したようです。楽しいワイド(シンハンド)は5.9、そのあとは繋げて登ってしまいましたが5.10a×2本という感じでした。


誰かが開拓してくれるから登らせてもらえる私。でも、もう少し自由に登りたい。
矛盾だらけなエゴですが、少しでも自由に近づけたらいいなと、そんな想いを胸に登っています。
だって、私たちの遊びはFree Climbingだもん!

寺井杏雛