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ロッククライミングの種類 〜フリー、エイド、スポート、トラッドって何?〜 AN#07
2024-03-13 (ANJUブログ)

今回は前回よりももう少し深掘りして、ロッククライミングの種類について考えていきます。(ボルダリングやロープクライミングの基本的な説明は前回の記事をお読みください。)
岩登り、つまりロッククライミングには、まず道具に頼らず人力だけで登っていくフリークライミングと、そうでないエイドクライミングがあります。
エイドクライミングでは、例えばアブミと呼ばれる梯子のようなものを使ったり、様々な道具を駆使して前進していくので一見フリークライミングより易しそうに感じますが、実際はより恐ろしいものとも言えます。フリーで突破出来ない弱点の少ない壁をなんとか登ろうとする際に用いられたりもするので、安全確保の難しさだったり、単純にフリーとエイドを同じ尺度で考えることはできません。

↑エイド ※随分と昔の写真を引用してしまいましたが、恐らく小さなポケットにスカイフックのようなものでアブミをかけています。このアブミを掴み、踏み登っていくのでしょう。
参照: http://www.mcs-proguide.com/newpage/newpage311.html
一方で、現在日本の大多数のクライマーが実践しているのが、フリークライミングです。フリークライミングは、大まかにロープクライミングとボルダリングに分けられます。ロープやマットの道具を使ってもエイドとみなされないのは、それらの道具が登るためではなく安全確保のために使われているからです。よって、フリークライミングにおいて、ロープにぶら下がったり、マットに足がついたりすれば、それは完登とみなされません。
ロープクライミングの中にも、すでにボルトが打ってあるところを登るスポートクライミングと、岩の割れ目や隙間(クラックやポケット)に回収可能で岩を傷つけないカムやナッツと呼ばれるナチュラルプロテクションをセットしながら登っていくトラッドクライミングがあります。
傾向として、スポーツクライミングではボルトが既に打たれてあるので肉体的な能力がより求められるのに対し、トラッドクライミングではどこにギアをセットするかを自分で考えなくてはならないテクニカルな側面があります。また、スポートクライミングでは、ボルトにクイックドローをかけながら登ることを「マスター」と呼び、マスターの方が動作が多い分負荷も大きくなるが、事前にクイックドローをかけてから登っても完登とみなされます。むしろ、マスターで登った場合に、※マスターオンサイト/マスターレッドポイント等区別して呼ぶ事が多いです。
※オンサイト(OS)とは、ルートを初見で最初のトライで完登することを言います。
レッドポイント(RP)とは、一度以上トライしたルートを完登することを言います。
フラッシュ(FL)とは、誰か他の人の登りをみたり、動画などで岩の情報を得た上で、最初のトライで完登することを言います。

↑スポート : 岩にボルトが打ってあるところにクイックドローをかけて登っていきます。
一方で、トラッドクライミングでは、プロテクションセットしながら登ることが前提となっております。事前にプロテクションをセットしておいて完登した場合はピンクポイントと呼び、完全な完登であるレッドポイントとは区別されます。

↑トラッド : クラックにカムやナッツをセットしながら登っていきます。
スポートをボルトのルート、トラッドをナチュラルプロテクションのルートと上述しましたが、正確には、見方によって変わるし、どちらか完全に定義できないルートもあるでしょう。そもそもトラッドはトラディショナル、つまり伝統的という意味です。よって、開拓スタイルがグランドアップか否かという見方もできます。この場合、グランドアップで、スタンスに立ち込みボルトを打ったルートもトラッドでしょう。しかし、ルートのプロテクションの全てがグランドアップで打たれたボルトの場合、初登者にとっては完全にトラッドであっても、初登者以外のクライマーにとってはボルトのルートとなるでしょう。また、トラッド主体だがボルトが一本でも打たれている場合、あるいはボルト主体だが一箇所だけナチュラルプロテクションを使う場合、それらを明確に区分することは難しいです。
ちなみに、トラッドかスポートかという区分とはまた変わってきますが、ロープクライミングの中には終了点まで登ったら地面まで降りてくるシングルピッチのものと、降りずに何ピッチも登っていくマルチピッチクライミングがあります。巨大な岩頭を一番上まで登るために、ロープの長さも考慮しながら途中でピッチを切り、何ピッチかに分けて登っていくイメージです。岩の大きさが1000mくらいになるとビッグウォールクライミングなんて呼んだりもし、ヨセミテのエル・キャピタンなどでは岩の中で寝泊まりをしながら頂上を目指すこともあります。

↑マルチピッチ ※この写真は、フォローが(2番か3番目に登る人)がリード(1番目に登る人)にビレイしてもらって、登っている様子。
ボルダリングは通常3〜4m以内程度の岩をマットを敷いて登ることが多いです。5m以上の岩を登ることもあり、ハイボルダーなんて言ったりします。
また、通常ロープをつけて登るところをつけずに登れば、それはフリーソロに該当します。アレックス・オノルドのエルキャプ、フリーライダーをフリーソロした映画もありますね。危険でしかないのでフリーソロは全く推奨しておりません。絶対に真似しないようにしましょう。
ちなみに、ソロクライミングというのもあり、これはビレイヤーなしで、クライマーが1人でロープをつけて安全を確保しながら登っていくものです。ソロクライミングのためには、ソロシステムを理解する必要があります。
どのようなスタイルで登るかは個人の自由ですが、怪我や事故が発生した場合、自分と身近な人だけでなく、その岩場の存続問題に関わってくることもあります。自分の力量をよく考え、しっかりと安全を確保しながら登りましょう。
以上がロッククライミングの種類でした。私の好きな分野である「トラッド」の定義は一体何なのか、考えさせられました。ロッククライミングは正式な競技ともまた違うので、定義が必ずしも明確ではない部分が多いと思います。ただ、ボルダリングにせよ、ビックウォールにせよ、それぞれすべてに楽しさ、難しさ、魅力があるので、自分にとってしっくりくる登り方やスタイルをじっくりと長い年月をかけて見つけていきたいものですね。装備の少なさで言えば、シューズとマットを用意すれば始められるのでボルダリングが最も始めやすいです。まだ岩に行った事がないという人はぜひ今年は岩と触れ合いましょう!
日本には山や海や川など様々な場所に、たくさんの岩がありますが、許可を得た上で登れるエリアはトポと呼ばれるエリアの本があります。
私有地やご神体のエリアも多く、開拓者たちが直接交渉したり、地域住民の方の理解を得て環境を保存しつつ登るなど、見えないたくさんの努力の結果、現在のエリアが保たれています。
ルールを守って、登って良いエリアで登るようしましょう。
寺井杏雛
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