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ヨセミテ エルキャプ ド敗退記 番外編 AN#09

2024-03-29 (ANJUブログ)

番外編

ビッグウォールがどんなものかより伝わるように、ここで少し補足させてもらいます。
(前編はこちら。)

まずは、フリーライダー全貌に対する補足から。

フリーライダーというルートは、このトポのような全貌になっています。(右下が1ピッチ目、左上がトップ)

そして、前回登ったフリーブラストは①までのことを言います。①の最終地点Heart Ledgesから地上までロープがすでに張られており、自分たちのロープを使わずにそのFixロープを使って下降することや、ユマーリングでクライミングをせずにロープをつたって登っていくことができます。

Fixロープ…固定されたロープのこと
ユマーリング…アッセンダーと呼ばれる道具を使ってFixを登っていくこと。

手に持っているものがアッセンダー。さらにアブミと呼べれる、はしごのようなものに足をかけて、手で引き、足で踏み込んで登っていきます。慣れないと、自分が登れるグレード内であれば普通に登った方が楽だったりもします…。

そして、この全29ピッチを1日で登りきれる人はこの地球上にそう多くはいません。多くの人は、壁の中で寝泊まりしながら数日かけて登ります。そのため、壁の中で過ごす分の水、食料、寝具等々を持っていかなくてはなりません。それらを全部背負っていくのは重量的に厳しいので、ホールバッグと呼ばれるバケツ状の大きなバッグに荷物を入れて、クライミングとは別に「荷上げ」を行います。

この巨大なホールバッグを…

こんな風に、ロープに連結させて、滑車のシステムを使って人力で引き上げます。

前編でも軽く触れましたが、Heart Ledgesまで先に荷上げをしておいて、フリーブラストを含むフリーライダーの全てを一気に登るのが一般的です。しかし、今回は自分たちの実力を考慮して、荷上げはせずにマルチピッチの装備で①のフリーブラスト(Heart Ledgesまで)を登ったら一度降りました。後日、Fixを使って荷上げをして再びHeart Ledgesまで行き、一泊します。その後は、②、③、④で一泊ずつして、最後は岩頭から歩いて降りるという計画でした。

②、③、④はレッジ状になっているなど、寝やすそうな形状だったので私たちはそこで一泊する計画を立てましたが、ポーターレッジを使えば基本どこの終了点でも寝れると思います。

これは木に吊るしていますが、こんな感じで岩の途中で宙に浮きながら寝ることができます。寝心地は悪くないですが、できればレッジなど岩の上に直接寝たいものです。

続いて、食事について。
行動食は私はベーグルにサラミを挟んだもの、スティックチーズやナッツ、ドライフルーツ、ミニドーナツ、クッキーなどを用意しました。
朝夕はお湯を沸かし、アルファ米を中心に食べました。タンパク質はハードサラミや、パウチに入ったチキンやツナから摂取しました。
嗜好品として、ココアやカフェラテも持って行きました。


ちなみに、服は5日間、着替えませんでした。お風呂はもちろん入れませんし、手もウェットティッシュで拭くくらいしかできませんので、日本で普通に生活している時と比べると結構汚いですね。


以上が、番外編、ビッグウォールに関するちょっとした補足でした!
岩の上で寝ている様子や、岩からの景色など、フリーライダー本編は後編をお楽しみに!

寺井杏雛