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ビデブー アメリカクライミングトリップ 前編 AN#03

2024-02-16 (ANJUブログ)

ワイド好きなら知らない人はいないであろう、アメリカワイオミング州にあるワイドクラック天国”Vedauwoo“へ昨年(2023年)の夏に行ってきた。

一昨年(2022)の11月に自分のワイド目標であった、帝王(瑞牆 帝王岩 5.12a)を登った私の心は、早速ビデブーへ向かっていた。

パートナーを探そうにも、エリアがワイドで有名なためか、なかなか見つからない(世の中にワイド好きは意外と少ないのだ)。そんなこんなで年が明け、焦った私は強行手段、SNS逆ナンを試みていた笑。インスタの投稿がほぼ国内高難度ワイドの人を見つけ、フォローし、「一緒にビデブー行きませんか」と唐突にDMしたところ、一旦断られる…。しかし、何故か後日OKの返事が来て、会ったこともない知らない男性とアメリカに行く状態に!

その後パートナーとは何度か日本で登り、アメリカで初めまして状態は回避し、なんだかんだで出発。アメリカン航空を利用したが、機内がかなり寒いことを除いてすごく快適。羽田空港発、ダラス空港で乗り継ぎ、あっという間にデンバー空港に到着だ。

デンバー空港から2時間も走れば、大草原に突如岩群が現れる。かなり奇妙な光景だ。ちなみに日本で2時間というと、割と近く感じるが、景色の全く変わらない大草原を2時間走るのは随分と長く感じた。

さて、旅の始まりだ。

DAY1
残念ながら雨。とりあえず最寄りの街ララミーで買い出しを済ませる。ララミーまでは車で20分ほどなので、非常に行きやすい。リサイクルショップとウォルマートがあるから、色んなものが割と安価で手に入る。宿泊はビデブーの無料のキャンプサイト、雨の凌げそうな岩屋の下にテントを張る。

ちなみにビデブーには無料のテントサイトと有料のテントサイトがあり、無料のテントサイトにはなんの設備もないので、もちろん水などは給水スポットを見つけてそこで確保しなくてはならない。

DAY2
今日もお天気があんまりよろしくない。ガッスガスの中、駐車場で話したアメリカの姉さんのおすすめmother 5.7をやりに行く。

アメリカ一本目ってだけでテンション爆上がり。5.7なのでただただ楽しく最高だった。何本か登ったけどガスガスすぎてロープも服も濡れてしまう。乾燥してて毎日晴天だという話聞いてたのに…と不安になりながらお昼頃下山。

その後パートナーの希望でワイドボルダーへ。パートナーはノーマットで完登。私はマットなしにひよって触りもしない。

そしてようやく午後になってガスが抜けて晴れた。ようやくビデブーらしくなってきた!
ちなみに、このあと帰国まで通り雨を除けばずっと晴天が続いた。

DAY3
トポをみて一目惚れしていたルートThe Convict 5.9をやりに昨日とは違うエリアに。車を停めると、昨日のアメリカ姉さんがいるではないか!お互いに昨日の人だ〜〜となり、仲良くなって一緒に行くことに!


↑アプローチがなかなかワイルドだった。


↑The Convict 5.9

最初は背面と足で、最後は大の字でサスケみたいに登って右壁に移る!ひたすらに楽しい。老後はこういうワイドを登って過ごしたいものだ。

↑トポのおじさんをオマージュしといた。

他にもThe Shocker 5.11dなど何本か登っていたら、雷が鳴り出した。すぐ止むだろうと鷹を括って岩の隙間で待機していたら、雹まで降りだし、もう全身ずぶ濡れ。小雨になったタイミングで歩き始めたらすぐやみ、すぐ晴天に戻った。

↑The Shocker 5.11d(トポによってグレードがまちまち。これは5.10dくらいに感じた)

DAY4
レストでララミーの街におりた。 ララミーの人は基本超優しい、という印象を受けた。困った顔してるだけでみんな声かけて助けてくれる。ありがたい。 街の体育館でシャワーを浴び、コインランドリーで洗濯を済ませ、ウォルマートで買い出し、水の確保も行った。

今回利用した施設。参考までに↓
シャワー:City of Laramie Parks and Recreation( https://maps.app.goo.gl/cAK3NJ42YTNNJ16Y7?g_st=il)
コインランドリー:Spic and Span Laundromat( https://maps.app.goo.gl/RWP6Eser8y4YZGYM8?g_st=il)
水場:Abraham Lincoln Memorial Monument( https://maps.app.goo.gl/5gYrJ3idN59fe4jd6?g_st=il)

DAY5
ビデブー生活にも慣れてきたところで、squat 5.12bに向かおうと車を走らせる。すると、でかい石を踏んでしまい、タイヤがピンチカットとかいう状態に。パンクより厄介で、交換するしかないらしい。スペアタイヤに交換しようにもジャッキが入ってなかったりで困ってキャンパーに助けてもらった。ちなみに英語が苦手な私はタイヤの説明の際にパンクと言っていたがまったく伝わらなかった。パンクはflat tireなんだ…。遥か昔に習った気がする。
今回レンタルした会社のHartzは日本人であることを伝えれば、通訳者を交えて日本語対応してくれた。タイヤも保険に入っていたから、新しいのに無料で交換できてラッキー。

気を取り直して午後から近場のエリアへ。October Light 5.11aにど敗退して、慰めのつもりで取り着いたLeft Torpedo Tube 5.10a。

まずはかなり広めなワイドを登っていくと徐々に5番サイズくらいに。左半身をなんとかクラックの奥へ奥へとねじ込むが、じわじわとクラックの外に吐き出されそうになりながらも奮闘し、なんとか核心を越える。あとは6-7番サイズ。長い。落ちないけど登りずらいスクイズチムニーをまあまあランナウトしながらOS。全く5.10aではなかったけど、素晴らしい奮闘的ワイドだった!

すんごく楽しかったんだけど、左半身の筋肉痛が3日間くらい取れなかった。

DAY6
昨日のリベンジ、squat 5.12bへ。取り付いてはみたけど、インバージョン(足先行)苦手で怖い…ってことで1トライで私は終了。すぐそばのワイド〜フェイスのルートをやってあとはビレイに徹する。普段ワイドしかやらないけど、ワイドでもこうやって選り好みするのは良くない、これだからなかなか強くならない。フェイスもフィンガーもインバージョンも全部楽しめるようなりたいものだ。

DAY7
さて、いよいよこの日は、Lucille 5.12b-5.13aへ!予習が大の苦手な私はその場に行くまでルートの見た目や全貌すら知らなかったけど、なんとなくsquat, Lucille, The Forever war ならsquat以外の2本の方が好みだろうと思ってたから朝からワクワク。ちなみに、Lucilleは世界で最初に5.13がつけられたワイドクラック。ワイドクラック史に残る重要なルートだ。

岩を見上げた瞬間、心の底から登りたいという感情が込み上げてきた。あまりにもかっこいい。

岩の奥からルーフワイドをトラバースして出てきて、ルーフを抜けたら直上。直上はカムの6番サイズに見えるから得意そう。
とりあえず違うルートを1ピッチ登ってビレイ点へ。まずはパートナーのトライ。熱い一撃をかましてくれた。あぁ、早く私も挟まりたい!!!

いよいよロープを結んで、大きいギアを腰ラックにかけて、いざ、挟まる。ルーフ部分は7番サイズで、途中フルインバートになったり真横を向いたりモゾモゾしながらトラバース、楽しい。あっという間にルーフの抜け口に。頭を上に正体の姿勢になって、あとは得意サイズで直上!のはずが意外と悪い。普通に落ちそう。でも落ちてたまるか、慎重に慎重に高度を稼いでいく。でもワンポイントすんごく悪い。這い上がれない。。しかも6番がスタックしてしまい動かない!仕方ない、ここに6番を置いて突っ込もう!。。。フォール!!なーーーんでー?!6番サイズなのに!ムーブを色々探ってトップアウトしてダウン。スタックした6番回収に手間取ってる間に、風がどんどん強くなっていく。


一便出しただけで猛烈に疲れた。なんとかできたムーブもあんまり自信がない。でもワンデイしたい。多分この疲労感は2トライが限界だ、次で決めるしかない。少し休んで再トライ。ルーフに行くまでのなんてことないアプローチ的なハンドクラックの時点でヨレを感じる。トラバース部も抜け口もさっきの倍くらい悪い。しかも、本当に本当に風が強い。(ワイオミング州の風の強さは確か全米1位!)強すぎて息ができない。風が少しでも収まるのを待ちながら、ゆっくり前進していく。風が弱まった。丁寧にさっき確認したムーブをこなして悪いワンポイントを超えた!あとは慎重にズリズリして、、、無事RP。

終了点でちょっぴり嬉し涙が出た。

ワイド以外はできないというかやらないし、ワイドもいつも情けない登りばかりして、言い訳ばっか。決めきれない。そんな弱っちい私と、この瞬間だけはおさらばできたと思う。Lucilleは5.13はないように感じるし、5.12bもあるんだろうか…という感じだけど、その瞬間私にとってグレードは本当にどうでもいい存在だった。見て、かっこいい!登りたい!って思ったルートを、一撃はできなかったけどワンデイしたいって思ったルートを、ワンデイできたことに、素直に成長を感じて嬉しかった。

2人とも無事登れて、非常にハッピーな日だったので、街に降りてステーキ買って焼いて食べた。最高にうまかった!!


DAY8
レスト

-後編に続く-


※テントサイトや街、ルートの情報はすべて2023年9月時点のものであり、最新のものではございませんので、ご注意ください。

寺井杏雛